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お知らせ

日本疾患メタボローム解析研究所のGC/MSを用いる尿メタボローム解析(GC/MS-based urine metabolomics)の申込書に尿酸値異常と尿路結石症の項目を追加しました。低尿酸血症、高尿酸血症、尿路結石症の患者さんの早期診断を支援します。

尿をウレアーゼで前処理したあと、有機酸、極性の高い有機酸、アミノ酸、糖類、プリン、ピリミジンのGC/MSによる一斉分析に関する論文(松本・久原、Mass Spectrom Rev, 1996、その他)は、海外ではメタボロームの黎明期にあって最も進んだ医学分野の応用例として高く評価されました。

一方、国内では大変おどろいたことに、ウレアーゼで尿に大多量に存在する尿素を分解除去した後、有機溶媒で有機酸を分画すれば、従来と同じ有機酸の情報が得られ、尿素のコンタミがなくてよろしい、しかし、ウレアーゼ処理後に有機溶媒で分画しなければ、複雑な成分が混在しデータ解析が大変だからといった趣旨の論調が現れ、この論文の革新性は理解されず、あるいは誤解されたようでした(初期の数年間だけかと思ったのですが)。確かにGC/MSを用いる有機酸分析の経験が十分でないと、メタボロームの複雑な解析は無理ですから、そのような心配があるのは当然です。しかし、メタボロミクスを無視する理由にはなりません。

10年以上もまえのことですが、メタボロミクスの恩恵を最初に受けるのは先天性代謝異常の分野であると、オランダの厚生省の役人がこともなげに言っていました。また、これも、10年ほど前のことですが、来日し講演された米国の先天代謝異常学会の会長は、メタボロームは我々の世界であると言い切りました。先天性代謝異常の歴史から見て当然なことです。患者や医療を支える医療従事者やそれを支える国民がなによりも恩恵を受けるからです。

1996年の発表から20年以上も経過しました。しかし、プリン、ピリミジン、極性有機酸をも含むGC/MS-based urine metabolomicsが特殊検査として紹介されることがないため、特殊検査でスクリーニングされない疾患の診断がずっと遅れたままですし、これから先も遅れることでしょう。尿酸値異常、プリン、ピリミジン代謝異常(E-8, M)サッカロピン尿症の患者さんが困っています。尿酸値異常の小児が有機酸分析をうけています。あるいはエクソーム解析した後になお、必要があってGC/MS-based urine metabolomicsの検査を受けたりしています。尿酸値異常なら最初にGC/MS-based urine metabolomicsで調べることで時間と医療費を最小限に抑えることができます。

サッカロピン尿症(F.2-2)は高リジン血症II型ともいいます。本疾患のバイオマーカーであるサッカロピンはアミノ基を持つトリカルボン酸であるため、有機溶媒抽出法では検出されません。その上、一般検査や臨床像からは当疾患にフォーカスすることが難しく、診断が遅れがちです。高精密に、迅速に、安価にサッカロピンを調べるGC/MS-based urine metabolomicsを最初の検査に選べば、時間と医療費を大幅に削減できます。当検査所では尿や血清が届いた1,2日後に結果が分かります。確定度は99%と思われます。この確かな結果を得てから遺伝子解析に進むといいでしょう。なお、サッカロピンは尿が、リジンは血清が試料に適しますが、尿だけでもわかります。本疾患の検査法を開発し検査実績がある当検査所を活用し、metabolomicsの恩恵を患者やその家族に受けさせてください。

GC/MSを用いる尿有機酸分析とGC/MSを用いる尿メタボローム解析(GC/MS-based urine metabolomics)は対立するテクニックでなく、共存できるものです。後者は分析法としては有機酸分析ではないのですが、有機酸血症のほか、前者で分からない多くの疾患までが対象になります。

ウレアーゼ処理は加わったものの有機溶媒で分画するなら、従来と同じ有機酸分析(有機溶媒抽出法)に過ぎません。有機溶媒に移行する尿素はわずかですから、海外では有機酸分析は従来通りです。医療保険機関内の施設に限定しないと品質が低下し、保険が乱用される危惧があるそうですが、そうであれば、ウレアーゼ処理の有無に拘わらず、有機溶媒抽出法を採用する施設は国際認証を得て品質を証明することが望まれます。

一方、ウレアーゼ処理後に酸性下、有機溶媒で分画するという手法を取らない施設では、複雑な成分が混在した中から有機酸血症の化学診断に必要な有機酸は正しく評価していることを、同じ有機酸分析の国際認証を取得して証明することが望ましいです。それによって初めて、それ以外の代謝物群、極性の高い有機酸、プリン、ピリミジン、ガラクトースなどの糖類の解析についても、恐らく正しく評価しているであろうと、憶測できるからです。

各施設はGC/MSを用いる尿有機酸分析法か、有機溶媒抽出をしない方法か、どんな内標準物質を用いているか、通常何日で結果が出せるか、どんな疾患はどれくらいの的中率と考えているか等々を公表してはどうでしょうか?極性の高い有機酸であるオロット酸は高アンモニア血症では1ないし2日中に評価することが望ましいと言われます。有機溶媒抽出法では理論的にオロット酸の回収率は低いですが、有機溶媒抽出しない施設では安心できるという、簡単なものでもありません。複雑な成分が混在した中からオロット酸を正しく評価することができなければ、その他の有機酸も有機酸以外のアミノ酸、プリン、ピリミジンなどが正しく評価されている保証はありません。

2016年のERNDIMのリジン尿性蛋白不耐症(D.7)(Lysinuric protein intolerance、LPI)の検体では最も重要な指標であるオロット酸(オロット酸)の増加を見逃した施設が104施設中17施設ありました。当検査所では オロット酸 の評価は+9SDと著しい高値でした。ERNDMとしては有機酸分析ですから、オロット酸高値を見逃さなければよく、次にどんな疾患の可能性を疑い、どんな検査をするのか、を記述して終わりですが、対数変換後の9SDという著増であっても検査法により、あるいは同じ検査法でも施設により評価が大きく異なることを示しています。当検査所はGC/MS-based urine metabolomicsですから、Lys, Ornなどのアミノ酸も同時に測定します。オロット酸超高値だけでなく、結論はLPIと化学診断し報告しました。次にどんな疾患の可能性を疑い、そのためにはどんな検査をするのか、必要ないのです。

このように従来、検査できなかった、あるいは1回の検査で分からなかった疾患も対象とする高感度で廉価なGC/MS-based urine metabolomicsは患者や医療を支える医療従事者やそれを支える国民がなによりも先に恩恵を受ける検査です。メタボロミクスは21世紀、バクテリアからヒトまで、あるいは創薬のあらゆる段階で期待されますが、最初に恩恵を受けるのは先天性代謝異常の分野なのです。GC/MSはメタボロミクスに適しないというのは日本だけの風潮です。海外を見渡せば、わかることです。

有機酸分析による診断支援も日本では最初に取り組みました。故松本勇先生が掲げられた有機酸分析による診断支援(化学診断)は当時、画期的な検査法として受け入れられ、全国の医療機関から利用されました。これにより、日本の有機酸血症の患者が発見され、治療されるようになったのです。その後、数カ所で有機酸分析ができるようになり、現在、全国的に普及しています。しかし、このことが、ある意味で最新のメタボローム解析の利用を妨げています。というのは有機酸分析が日本ほど浸透していないアジアでは競合する検査が少ないため、メタボローム解析の利用が着実に進んでいるからです。故松本勇先生が掲げられた第2の画期的な検査法は1990年後半、日本から中国、インド、南米に広まり利用されました。当時は安定同位体希釈法の利用も限られ、異常度の算出法も初歩的であったとはいえ、多種類の疾患の早期発見・早期治療、医療費の有効利用を実現する革命的な検査技術でした。その後、技術の精度を高めてきた日本のメタボローム解析法が日本人に利用されず、その普及が遅れるのはきわめて残念です。

ところで、有機酸分析やメタボローム解析の一部としての有機酸分析の保険適用について、わが国では”保険医療機関内の検査施設のみ適用される”と規定しています。しかし、発見率や的中率の高い施設で検査を受けやすいよう誘導する論理的な規定が他にないでしょうか?遺伝子のダイナミックレインジは1ですが、これに対し代謝物のそれは10~10といわれますから、測定から判断までを含む化学診断は高度な学際的知識が必要です。分析装置は必要ですが、装置が診断支援を行うのではなく、同じ装置、同じ手法でも施設ごとに検査の精度は異なるからです。このことは、有機酸分析の検査施設が外部認証を得ること(あるいは少なくともそのプログラムに参加すること)の必要性を国際的な専門学会が痛感してきたことからもわかります。その結果、ERNDIM(註1)のような優れた国際認証機関が誕生し、活動しているのです。わが国の有機酸分析施設もウレアーゼ処理法を採用している施設も有機酸血症の診断支援を行うのですから、有機酸の保険適用ともなれば、保険医療機関内の施設であっても、当分野の国際的常識に従い、国際機関から“定性的有機酸分析”の認証を毎年受ける必要があると考えられます。日本医用マススペクトル学会の化学診断委員会では4年以上も前から、山口清次先生や重松陽介先生と共に様々な関連学会が検査施設に働きかけてゆくことを確認しています。しかし、今年も有機酸の保険適用施設の参加は全くありません。保険の適用制限の改正も厚生省に働きかけてゆくことを確認してきたのですが、6年目の今春も改正はなされませんでした。
以下は日本医用マススペクトル学会の化学診断委員会の活動の一部です。

GC/MSによる尿有機酸分析を実施している検査施設への案内(その2)
昨年ERNDIMのプログラムへの参加手順などをお示ししましたが、1年経ちましたので、過去のERNDIMのプログラム内容を紹介致します。本年9月ごろ来年度の検査申込みがありますので、是非とも“尿有機酸の定性的分析”の参加申し込みを済ませて下さい。

詳細は下記PDFよりご確認ください。
http://www.jsbms.jp/doc/kagaku_170603.pdf

日本からは日本疾患メタボローム解析研究所を含むわずか2施設がこの国際認証プログラムに参加し認証を受けています。しかし、上記の理由から有機酸分析の保険が適用されませんし、保険が適用される施設は認証を受けていません。他のアジアの国では医療関係者が検査施設に対し国際認証を要求するので施設は認証プログラムに参加せざるを得ません。検査の品質に関して検査の依頼側も受託側も日本は寛容すぎるように思います。

個人的にはウレアーゼ処理法を採用している施設は有機酸分析の経験と実績が相当なければメタボローム解析を行うことは難しいと思います。また、先天代謝異常関連学会と質量分析関連学会で長期間、会員として活躍していなければ、当分野すなわち、GC/MSで測定可能な比較的低分子量が指標であるような疾患領域を診断支援するメタボローム解析は難しいと思います。しかし、ERNDIMの国際認証プログラムに参加することで、この不足を少しでも補うことができます。

やがて、この国際認証機関が、適切な分析から正しい総合判断までを含む“定性的有機酸分析”に加え、適切な分析から正しい総合判断までを含む“メタボローム解析”の項目もプログラムに追加し、施設認証を行う時代が訪れることでしょうが、それは未だ遠い遠い先のように思われます。

註1 当分野の世界で最も優れた国際認証機構、European Research Network for evaluation and improvement of screening, Diagnosis and treatment of Inherited disorders of Metabolism
http://www.erndim.org/home/start.asp

トピックス

2018年6月も日本疾患メタボローム解析研究所は国際的品質認証機関から合格施設と認定されました。2014年度から毎年認定証を受領しています。

 当研究所は多くの疾患を検査対象としていますが、その一部に有機酸血症があります。国内では医療保険機関内の検査施設で行う有機酸分析に限り保険が適用されていますが、海外では検査施設が国際機関から毎年、品質認証を得ているか否かが最も重要とみなされています。当研究所は最も評価の高い国際的な認証機関ERNDIM (註1)の外部評価プログラムに2014年から参加し毎回合格証を得ています。2018年6月にも引き続き合格施設と認定されました。
 なお、2016年度は世界の108機関が参加しましたが、日本からは当研究所を含む僅か2機関だけでした(イギリスは16施設、フランスは17施設、中国は7施設参加)。日本医用マススペクトル学会でも国内の検査施設にERNDIMへの参加を呼びかけています。

註1 当分野の世界で最も優れた国際認証機構、European Research Network for evaluation and improvement of screening, Diagnosis and treatment of Inherited disorders of Metabolism
http://www.erndim.org/home/start.asp

最新情報

  1. 2,3-ジヒドロキシ-2-メチル酪酸(2,3-dihydroxy-2-methylbutanoate)は有機酸血症のほか、高乳酸血症、MELAS、Leigh脳症、ミトコンドリア枯渇症候群などのミトコンドリア病で増加します。極性の高い有機酸ですので、通常の有機酸分析では感度が不十分ですが、当検査所の分析法は本物質の評価に適しています。是非、高乳酸血症などのミトコンドリア病のスクリーニングや鑑別にご利用ください。評価を希望される方はお気軽にご連絡ください。
  2. ERNDIMは有機酸血症の化学診断の外部精度管理を行なう国際機関です。2017年は高プロリン血症II型(H.2)の検体も送られてきました。27か国の102の検査施設が参加しましたが、正解だったのはわずか35施設(正解率34%)だったことから、今回は評価しないことになりました。当検査所はプロリンが 10 SD以上の高値、高プロリン血症II型の指標であるdelta-1-pyrroline-5-carboxylate (Δ5PC)が5SD高値で、その他の指標も多量に検出されました。従って、当検査所の本疾患の確定度は99%以上と思われます。
  3. 2016年のERNDIMのリジン尿性蛋白不耐症(D.7)(Lysinuric protein intolerance)の検体では最も重要な指標であるオロット酸(orotate)の増加を見逃した施設が104施設中17施設ありました。当検査所の評価では orotate は+9SDと高値でした。当検査所では Lys, Ornなどのアミノ酸も同時に測定しますのでLPIと化学診断することのできた検体でした。ERNDMとしては有機酸分析でorotate高値を見逃さないで欲しかったのですが、9SDの著増であっても検査法により、あるいは同じ検査法でも施設により精度が大きく異なることを示しています。
  4. 2017年のERNDIMはメバロン酸キナーゼ欠損症(A.20)も評価対象で、正解であった施設は68%にとどまりましたが、当検査所ではmevalonolactoneが4SD高値できれいなマススペクトルが得られました。 従って、当疾患も高い確定度で鑑別できるものと思われます。なお、この疾患は発熱時の検体を調べる必要があります。
  5. ERNDIMから2017年、グルタル酸尿症II型(multiple acyl-CoA dehydrogenation deficiency)と中鎖アシル-CoA 脱水素酵素欠損症(medium chain acyl-CoA dehydrogenase deficiency, MCAD)の検体も届きましたが、当検査所のメタボローム検査法で両疾患の化学診断は迅速、明白、容易に行うことができました。
  6. 当検査所ではアロプリノール負荷試験も行っています。 最近の例ではHypoxanthine phosphoribosyl transferase 欠損症を当検査所でスクリーニングした後、アロプリノールを負荷した尿で、より確定的な本症の化学診断ができました。ご利用ください。
  7. マロン酸血症(H.7)(malonyl-CoA decarboxylase deficiency)が疑われる場合は有機溶媒抽出法(有機酸分析)で行いますので、予めお知らせください。
  8. サッカロピン尿症(A.2-2)は高リジン血症II型ともいいます。本疾患では一般検査や臨床像から高アンモニア血症やシトリン欠損症が疑われることがあります。この場合、遺伝子の検査に先立ちメタボローム解析をすることが迅速診断の第一歩です。有機酸分析ではわかりません。尿中のサッカロピンを調べることが、サッカロピン尿症の迅速診断の第一歩です。超高精密に、迅速に、安価にサッカロピンを調べる検査が不可欠です。当検査所では尿や血清が届いた1,2日後に結果が分かります。確定度は99%と思われます。この確かな結果を得てから遺伝子解析に進むといいでしょう。なお、サッカロピンは尿が、リジンは血清が試料に適します。本疾患の検査法を開発し検査実績があり、高精度で迅速に分析できる当検査所を患者さんの迅速診断に活用してください。

日本疾患メタボローム解析研究所は日本先天代謝異常学会の精密検査施設に認定されています。学会のホームページに掲載された疾患のほかにも当研究所でわかる疾患が多数あります。

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