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お知らせ

1996年以降の、主にメタボローム解析に関する論文を日本疾患メタボローム解析研究所のホームページに公開しました。それ以前は有機酸分析をとおしてわが国の希少疾患の早期発見に貢献しました。有機酸分析の経験と実績をもとに、メタボローム解析という革新的な診断支援を世界で最も早い時期に開始しています。

1996年以降の、主にメタボローム解析に関する論文

1996年に発表した下記の論文は最も進んだメタボロームの応用研究として、メタボロームの最前線で世界をリードした著明な海外の研究者の論文で引用されています。下記2論文はドイツのメタボローム研究のメッカ、Max Plank 研究所の論文です。

A new chemical diagnostic method for inborn errors of metabolism by mass spectrometry-rapid, practical, and simultaneous urinary metabolites analysis.
Matsumoto I, Kuhara T.
Mass Spectrom Rev. 1996;15(1):43-57.

Metabolic profiling: a Rosetta Stone for genomics?
RN Trethewey, AJ Krotzky, L Willmitzert- Current Opinion in Plant Biology, 1999 - Elsevier
Man has always aspired to understand the nature of life and the chances of achieving this, at least at the molecular level, have never looked better. As a technology-driven revolution sweeps through the life sciences and we are submerged in an avalanche of new information…

Metabolic profiling allows comprehensive phenotyping of genetically or environmentally modified plant systems
U Roessner, A Luedemann, D Brust, O Fiehn… The Plant…, 2001 - Am Soc Plant Biol
Metabolic profiling using gas chromatography?mass spectrometry technologies is a technique whose potential in the field of functional genomics is largely untapped. To demonstrate the general usefulness of this technique, we applied to diverse plant genotypes…

Furthermore
Google Scholar Matsumoto I, Kuhara T:Mass Spectrom Rev.1996

2005年に発表した下記の論文も、米国Food and Drug Administration (FDA) の研究者等のメタボローム研究の最前線で世界をリードする著明な海外の研究者の論文に引用されています。

Gas chromatographic-mass spectrometric urinary metabolome analysis to study mutations of inborn errors of metabolism.
Kuhara T.
Mass Spectrom Rev. 2005 Nov-Dec;24(6):814-27.

Global metabolic profiling and its role in systems biology to advance personalized medicine in the 21st century
LK Schnackenberg- Expert Review of Molecular Diagnostics, 2007 - Taylor & Francis
Systems biology attempts to elucidate the complex interaction between genes, proteins and metabolites to provide a mechanistic understanding of cellular function and how this function is affected by disease processes, drug toxicity or drug efficacy effects. Global metabolic …

Metabolomic biomarkers: their role in the critical path
LK Schnackenberg, RD Beger- Drug Discovery Today: Technologies, 2007 - Elsevier
Global metabolic profiling is being applied to identify biomarkers of health. Some small molecules are exquisitely sensitive indicators of health status. Metabolic profiling analyses are being used to determine biomarkers of drug safety and effectiveness as well as disease…

Mass spectrometry‐based metabolomics
K Dettmer, PA Aronov…Mass spectrometry…, 2007 - Wiley Online Library
This review presents an overview of the dynamically developing field of mass spectrometry-based metabolomics. Metabolomics aims at the comprehensive and quantitative analysis of wide arrays of metabolites in biological samples. These numerous analytes have very …

Furthermore
Google Scholar Kuhara T:Mass Spectrom Rev. 2005

有機酸分析による診断支援も日本では最初に取り組みました。故松本勇先生が掲げられた有機酸分析による診断支援(化学診断)は当時、画期的な検査法として受け入れられ、全国の医療機関から利用されました。これにより、日本の有機酸血症の患者が発見され、治療されるようになったのです。その後、数カ所で有機酸分析ができるようになり、現在、全国的に普及しています。しかし、このことが、ある意味で最新のメタボローム解析の利用を妨げています。というのは有機酸分析が日本ほど浸透していないアジアでは競合する検査が少ないため、メタボローム解析の利用が着実に進んでいるからです。故松本勇先生が掲げられた第2の画期的な検査法は1990年後半、日本から中国、インド、南米に広まり利用されました。当時は安定同位体希釈法の利用も限られ、異常度の算出法も初歩的であったとはいえ、多種類の疾患の早期発見・早期治療、医療費の有効利用を実現する革命的な検査技術でした。その後、技術の精度を高めてきた日本のメタボローム解析法が日本人に利用されず、その普及が遅れるのはきわめて残念です。

ところで、有機酸分析やメタボローム解析の一部としての有機酸分析の保険適用について、わが国では”保険医療機関内の検査施設のみ適用される”と規定しています。しかし、発見率や的中率の高い施設で検査を受けやすいよう誘導する論理的な規定が他にないでしょうか?遺伝子のダイナミックレインジは1ですが、これに対し代謝物のそれは10~10といわれますから、測定から判断までを含む化学診断は高度な学際的知識が必要です。分析装置は必要ですが、装置が診断支援を行うのではなく、同じ装置、同じ手法でも施設ごとに検査の精度は異なるからです。このことは、有機酸分析の検査施設が外部認証を得ること(あるいは少なくともそのプログラムに参加すること)の必要性を国際的な専門学会が痛感してきたことからもわかります。その結果、ERNDIM(註1)のような優れた国際認証機関が誕生し、活動しているのです。わが国の有機酸分析施設もウレアーゼ処理法を採用している施設も有機酸血症の診断支援を行うのですから、有機酸の保険適用ともなれば、保険医療機関内の施設であっても、当分野の国際的常識に従い、国際機関から“定性的有機酸分析”の認証を毎年受ける必要があると考えられます。日本医用マススペクトル学会の化学診断委員会では4年以上も前から、山口清次先生や重松陽介先生と共に様々な関連学会が検査施設に働きかけてゆくことを確認しています。しかし、今年も有機酸の保険適用施設の参加は全くありません。保険の適用制限の改正も厚生省に働きかけてゆくことを確認してきたのですが、6年目の今春も改正はなされませんでした。
以下は日本医用マススペクトル学会の化学診断委員会の活動の一部です。

GC/MSによる尿有機酸分析を実施している検査施設への案内(その2)
昨年ERNDIMのプログラムへの参加手順などをお示ししましたが、1年経ちましたので、過去のERNDIMのプログラム内容を紹介致します。本年9月ごろ来年度の検査申込みがありますので、是非とも“尿有機酸の定性的分析”の参加申し込みを済ませて下さい。

詳細は下記PDFよりご確認ください。
http://www.jsbms.jp/doc/kagaku_170603.pdf

日本からは日本疾患メタボローム解析研究所を含むわずか2施設がこの国際認証プログラムに参加し認証を受けています。しかし、上記の理由から有機酸分析の保険が適用されませんし、保険が適用される施設は認証を受けていません。他のアジアの国では医療関係者が検査施設に対し国際認証を要求するので施設は認証プログラムに参加せざるを得ません。検査の品質に関して検査の依頼側も受託側も日本は寛容すぎるように思います。

個人的にはウレアーゼ処理法を採用している施設は有機酸分析の経験と実績が相当なければメタボローム解析を行うことは難しいと思います。また、先天代謝異常関連学会と質量分析関連学会で長期間、会員として活躍していなければ、当分野すなわち、GC/MSで測定可能な比較的低分子量が指標であるような疾患領域を診断支援するメタボローム解析は難しいと思います。しかし、ERNDIMの国際認証プログラムに参加することで、この不足を少しでも補うことができます。

やがて、この国際認証機関が、適切な分析から正しい総合判断までを含む“定性的有機酸分析”に加え、適切な分析から正しい総合判断までを含む“メタボローム解析”の項目もプログラムに追加し、施設認証を行う時代が訪れることでしょうが、それは未だ遠い遠い先のように思われます。

註1 当分野の世界で最も優れた国際認証機構、European Research Network for evaluation and improvement of screening, Diagnosis and treatment of Inherited disorders of Metabolism
http://www.erndim.org/home/start.asp

トピックス

最新情報

  1. てんかんの患者さんの中にそうでない人が紛れていることがあります
    てんかんの患者さんのごく一部ですが、てんかんでなく、希少な疾患であるために診断がつきにくい病気をもつ人がいます。このような人には抗てんかん薬が有効でなく、ときに害を及ぼすことがあります。バルプロ酸もそのひとつです。すでに20年ほども前の1996年に発刊された“てんかん学の進歩”のなかで『バルプロ酸の代謝からみた副作用』を執筆しています。当時、提言したように、この場合の希少疾患は有機酸血症、尿素回路異常症、電子伝達系異常症など多岐にわたります。希少疾患にはそれぞれに異なる治療法がありますので、その人にあった治療、すなわち、個別化医療がほどこされるようになれば、てんかん類似の症状もおさまり、多くの場合で病状が改善します。現在、ごく一部の病院のみが当研究所へ、てんかん患者の中にこのような疾患を持つ人がいないか検査を依頼してきます。不運なことに、そのような検査を受けられなかった人の中に、後日、重篤な副作用が起きることが世界中で報告されています。全ての希少疾患を完璧に調べる方法は現在どこにもありませんが、多くの疾患のあるなしをかなり高い精度で、しかもきわめて低コストで調べることのできるメタボローム検査を一度受けておくことは決して無駄ではないように思います。検査で調べることのできる希少疾患は、有機酸分析からメタボローム解析に移行したことで、1996年当時より、病気の種類も格段に増え、検査の精度も大きく向上しています。
  2. 2,3-ジヒドロキシ-2-メチル酪酸(2,3-dihydroxy-2-methylbutanoate)は有機酸血症のほか、高乳酸血症、MELAS、Leigh脳症、ミトコンドリア枯渇症候群などのミトコンドリア病で増加します。極性の高い有機酸ですので、通常の有機酸分析では感度が不十分ですが、当検査所の分析法は本物質の評価に適しています。是非、高乳酸血症などのミトコンドリア病のスクリーニングや鑑別にご利用ください。評価を希望される方はお気軽にご連絡ください。
  3. ERNDIMは有機酸血症の化学診断の外部精度管理を行なう国際機関です。2017年は高プロリン血症II型(H.2)の検体も送られてきました。27か国の102の検査施設が参加しましたが、正解だったのはわずか35施設(正解率34%)だったことから、今回は評価しないことになりました。当検査所はプロリンが 10 SD以上の高値、高プロリン血症II型の指標であるdelta-1-pyrroline-5-carboxylate (Δ5PC)が5SD高値で、その他の指標も多量に検出されました。従って、当検査所の本疾患の確定度は99%以上と思われます。
  4. 2016年のERNDIMのリジン尿性蛋白不耐症(D.7)(Lysinuric protein intolerance)の検体では最も重要な指標であるオロット酸(orotate)の増加を見逃した施設が104施設中17施設ありました。当検査所の評価では orotate は+9SDと高値でした。当検査所では Lys, Ornなどのアミノ酸も同時に測定しますのでLPIと化学診断することのできた検体でした。ERNDMとしては有機酸分析でorotate高値を見逃さないで欲しかったのですが、9SDの著増であっても検査法により、あるいは同じ検査法でも施設により精度が大きく異なることを示しています。
  5. 2017年のERNDIMはメバロン酸キナーゼ欠損症(A.20)も評価対象で、正解であった施設は68%にとどまりましたが、当検査所ではmevalonolactoneが4SD高値できれいなマススペクトルが得られました。 従って、当疾患も高い確定度で鑑別できるものと思われます。なお、この疾患は発熱時の検体を調べる必要があります。
  6. ERNDIMから2017年、グルタル酸尿症II型(multiple acyl-CoA dehydrogenation deficiency)と中鎖アシル-CoA 脱水素酵素欠損症(medium chain acyl-CoA dehydrogenase deficiency, MCAD)の検体も届きましたが、当検査所のメタボローム検査法で両疾患の化学診断は迅速、明白、容易に行うことができました。
  7. 当検査所ではアロプリノール負荷試験も行っています。 最近の例ではHypoxanthine phosphoribosyl transferase 欠損症を当検査所でスクリーニングした後、アロプリノールを負荷した尿で、より確定的な本症の化学診断ができました。ご利用ください。
  8. マロン酸血症(H.7)(malonyl-CoA decarboxylase deficiency)が疑われる場合は有機溶媒抽出法(有機酸分析)で行いますので、予めお知らせください。
  9. サッカロピン尿症(A.2-2)は高リジン血症II型ともいいます。本疾患では一般検査や臨床像から高アンモニア血症やシトリン欠損症が疑われることがあります。この場合、遺伝子の検査に先立ちメタボローム解析をすることが迅速診断の第一歩です。有機酸分析ではわかりません。尿中のサッカロピンを調べることが、サッカロピン尿症の迅速診断の第一歩です。超高精密に、迅速に、安価にサッカロピンを調べる検査が不可欠です。当検査所では尿や血清が届いた1,2日後に結果が分かります。確定度は99%と思われます。この確かな結果を得てから遺伝子解析に進むといいでしょう。なお、サッカロピンは尿が、リジンは血清が試料に適します。本疾患の検査法を開発し検査実績があり、高精度で迅速に分析できる当検査所を患者さんの迅速診断に活用してください。

2017年6月も日本疾患メタボローム解析研究所は国際的品質認証機関から合格施設と認定されました。2014年度から毎年認定証を受領しています。

 当研究所は多くの疾患を検査対象としていますが、その一部に有機酸血症があります。国内では医療保険機関内の検査施設で行う有機酸分析に限り保険が適用されていますが、海外では検査施設が国際機関から毎年、品質認証を得ているか否かが最も重要とみなされています。当研究所は最も評価の高い国際的な認証機関ERNDIM (註1)の外部評価プログラムに2014年から参加し毎回合格証を得ています。2017年6月にも引き続き合格施設と認定されました。
 なお、2016年度は世界の108機関が参加しましたが、日本からは当研究所を含む僅か2機関だけでした(イギリスは16施設、フランスは17施設、中国は7施設参加)。日本医用マススペクトル学会でも国内の検査施設にERNDIMへの参加を呼びかけています。

註1 当分野の世界で最も優れた国際認証機構、European Research Network for evaluation and improvement of screening, Diagnosis and treatment of Inherited disorders of Metabolism
http://www.erndim.org/home/start.asp

日本疾患メタボローム解析研究所は日本先天代謝異常学会の精密検査施設に認定されています。学会のホームページに掲載された疾患のほかにも当研究所でわかる疾患が多数あります。

〔研究〕論文発表

〔研究〕 論文発表 Published online before print April 3, 2017
Nit1 is a metabolite repair enzyme that hydrolyzes deaminated glutathione

Alessio Peracchi, Maria Veiga-da-Cunha, Tomiko Kuhara, Arthur J. L. Cooper, and Emile Van Schaftingen

http://www.pnas.org/content/early/2017/03/29/1613736114.abstract

最も魅力的な機能未知遺伝子トップ10のひとつ、Nit 1に関する論文です。当研究所のメタボロミクスの用途は広く、機能未知遺伝子の機能解明にも役立ちます。本論文のような生命科学の基礎研究や創薬のあらゆる段階での研究に利用できます。


兼六園 新緑

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