検査の特長
背景:1970年代、アジアで最も早くに質量分析計という機器を用い、百種類以上の代謝物を一斉に計測し、有機酸血症とよばれる稀少疾患の診断を支援してきました。その経験をもとに1990年代前半に世界に先駆けて、臨床検査として役立つメタボローム検査を始めました。日本疾患メタボローム析研究所(Japan Clinical Metabolomics Institute (JCMI) の検査は海外でもこれから、というほどの先端的検査です。
メタボローム解析で一度に大量の生命情報を得ることができます:メタボロームには、代謝物すべて、代謝物総体というような意味があります。従来の有機酸のみ、あるいはアミノ酸のみの分析ではなく、有機酸、アミノ酸、糖、プリン、ピリミジンをまとめてメタボローム解析では測りますので、一度に大量の生命情報を得ることができます((注1、注2)。
早期診断を支援:先天代謝異常の特徴は一般的な検査や臨床所見では病気の原因がわかり難いことです。そのため、診断が数か月あるいは数十年遅れる人が少なくありません。しかし、尿の代謝物を高精度に専門的に解析することで、一人一人の病因を知ることができます。JCMIの使命は希少疾患による心身障害の発症予防あるいは心身障害の軽減です。そのための早期の診断を支援することにあります(註3)。
尿は遺伝情報の宝庫:尿は多種類の代謝物を含みますから生命情報の宝庫です。この尿をJCMIは検査に用います。尿は肝細胞や血液と異なり、非侵襲的に得ることができます。尿は凍結状態にてクール宅急便などで、あるいは乾燥ろ紙尿として普通の航空便や郵便で、国内あるいは海外のどこからでも送ることができます。尿を届けるだけで、先天性代謝異常症の100種類以上もの病因を調べられます (註3)。。
注1. | 現行の有機酸分析、アミノ酸分析、タンデムマス検査では、それぞれ有機酸、アミノ酸、わずか数種のアミノ酸とアシルカルニチンだけを測ります。プリンやピリミジン、糖類を高感度、高精度に分析する実用的な検査は他にありません。 |
注2. | 1,000種類をこえる代謝物が計測できます。その中の400種類を解析し被験者と健常群と比較し評価します。 |
注3. | このような診断支援は代謝物の化学的性質を利用し、生物学的な意味・情報を駆使し(bioinformatics)、診断の根拠を提供するので化学診断といいます。代謝物レベルの診断ともいいます。 |
1回の検査でわかる病気の種類が多い:一度に数百種類の代謝物を測定し評価するため、100種類以上の疾患の有無を調べることができます。従来、診断に数か月あるいは数年かかった疾患、あるいは他の検査で見逃される疾患の診断を支援します。それにより、早期の個別化医療の実現に貢献します。
費用は廉価: 質量分析と云う高精度分子分析機器を用いるにもかかわらず、1疾患あたりの費用対効果に優れる
検査はきわめて迅速: 一般の検査所では検査に1週間~1月かかります。緊急を要する場合、検体到着から3~4時間以内に、通常でも1-3日内に検査結果を報告します。
多くの疾患が高い的中率:JCMIが化学診断(診断支援)に用いる“バイオマーカー”は国際的にも立証されたもので、実際のデータも40年に亘る研究と実践で蓄積してきたものです。大量データの解析や評価法についても研究を進めてきました。その結果、疾患“的中率”は高く、その技術は海外でも高く評価されています。
事前にメタボローム検査を受けると経済的です: 現行の有機酸分析やアミノ酸分析の前にJCMIのメタボローム検査を受けることで早期に、病気の原因を知る、または多くの疾患を除外できる結果、診断が迅速に進められますし、患者さんや医療関係者の負担が軽減され、費用対便益比も改善されます。
日本の多くの医療関係者や患者さんがこの検査を知りません:メタボローム検査は医療関係者や患者さんに十分浸透していません。現在、国内の検査機関では検査できないからと、海外に依頼される検査の中に、JCMIが迅速に高精度に対応できるものがあります。